sahy’s diary

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読書かんそうぶん3:戦国北条記

今回の読書感想文はこちらの一冊。

戦国北条記でございます。

戦国時代の著名な人物と聞いて誰もが名を挙げるのは天才肌の覇王信長、立身出世の代名詞秀吉、窮極的な勝利者家康の3名かと思われます。戦国時代は様々な名作によって他の時代より際立って深く、人物の魅力が掘り下げられた時代であると感じます。

今回読んだ本は北条早雲から続く北条家五代の命運を綿密な調査のもと記している作品で、これまた人から勧められてのものでございます。時折著者の考察や指摘が入るのですが、ことごとく鋭く、あるいは筋道の通った説明がなされているのですんなりと腑に落ちます。

北条早雲は民のための徳政を為した人であり、かの時代に4公6民という負担を貫いたというのは稀有も稀有。税を4割に抑え6割は民の懐に残すということですが、わたしのあーぱーな頭で計算すると現代日本の方が税負担高くて衝撃を受けました。

日本の税はわかりにくいよう巧妙に小分けされており、住民税10%、消費税8%、所得税5%~45%。ちょっと計算が怪しいですが健康保険が多分10%÷2(労使折半)で5%前後、年金保険が18%弱。最低基準で足し上げても46%近くなると考えると、じつに半分近くを持っていかれることになりますね。

もっとも、保険は医療負担の軽減につながり、年金はいずれ支給されるもの。税がどの段階で計算されるかにより総所得に占める率も違ってきますし、単純に額だけで比較はできませんが、現役世代にとっては恩恵が薄いことは間違いありません。これでは可処分所得も増えず生活も楽にならないというもの。

これはまた別の本の話になりますが、早雲は若いころ飢饉で大勢が死ぬかたわら、食いきれないほどのコメを保管する有力者が存在することを目にし矛盾を感じていたのであろうと推測されとります。以前特殊詐欺に関する本(この本についてもいずれ書きたいなあ…)を読んだ際、重い負担に耐え貯えもなく将来に希望の持てない者の隣に、たっぷりと金をためそのうえさらに優遇を受ける存在がいる、という歪みがみられることに言及されていました。

驚くことに現代の資本主義経済の下で起きている状況が戦国時代にもみられたというのはなんとも皮肉。貧富の格差の原因は資本主義のゆがみなどではないのかもしれないと一瞬思いつつ、いややはり資本主義に隠された毒が牙をむいているという考えも捨てきれない、と思考の迷路にハマるのもまた愉し。

だいぶ話は逸れましたが、北条一族は民のための徳政を布き、戦や外交においても筋を通すことを信条とした生き様、そしてその哲学を五代にわたり受け継いだ、まさに名君の血筋といえることがよくわかる本でございます。